この世界を破壊せんと目論んでいるアヤトキと、
彼らによって作られた綻びを修復するアヤオリ。
世界は人知れず争うふたつの勢力に挟まれて、
危うい均衡を保っている。
……そう信じている男は、ある夜、
未来からやってきたと自称する少女みくと出会う(生への供物)。
男が出遭ってしまったのは最強のアヤトキだった。
死を回避するために男は時を遡る(逆行世界の再生速度)。
バーで耳にした、
「死なない少女を殺してみようぜ」という魅力的な誘いに
男はうっかり乗ってしまう(試みに殺してみる)。
大阪を彷徨い歩きながら、
男は生きる意味を自問する(大阪彷徨記)。
『大阪彷徨記』
著者:秋山真琴
発行:雲上回廊
頒布:第三回「文学フリマ大阪」D-03 雲上回廊
日程:2015年9月20日(日)
価格:400円
判型:A6(文庫本)
頁数:84ページ
部数:100部
最初からいなかったかのように嫁がいなくなって一週間、俺、しかし精神が波立つこともなく、いたって平穏な毎日を送っている。それもそのはず、元より俺と嫁の生きる時間は異なっていた。朝と平日の住民であった嫁は、夜明けと共に目を覚まし、コーヒーを淹れ、颯爽と仕事に出かけるか、水曜日であるならば映画館へと繰り出していった。一方、夜と週末の住民であるところの俺、目覚ましが鳴ると同時に自動的に起き上がり、シャワーを浴び、ぬるくなったコーヒーを飲んでから出社、帰宅は終電もしくはタクシー。息を殺し、自分を殺すようにして一週間を生き延び、気がつけば金曜日の夜、人間性を取り戻すために酒に浸り、やはり普段通り夜更けに帰宅し、呆然と土曜日の朝ないし昼を迎えるのだった。俺、を支配する摩耗した生活において、嫁は色彩なりえず、その嫁が、ある日、忽然といなくなってしまったとしても影響などあるわけもなかったのだ。良い意味でも、悪い意味でも。敢えて言うならば、そう、ぬるいコーヒーが飲めなくなったくらいだ。
(本文62ページより)
【目次】
「生への供物」
「逆行世界の再生速度」
「試みに殺してみる」
「大阪彷徨記」
【購入方法】
文学フリマ等の即売会で直接販売をおこなっております。
11月以降より委託や通販、電子書籍化を予定しております。