それは大地がひとつだったときのこと。
大気にはエーテルが満ち、人々は軌道式を用いずとも、魔法を扱うことができた。
大地は東方、中央、西域に分断され、人々の行き来はなかった、
災害に襲われ世界が滅びるまで(スターリストリィ)。
天裂く塔を巡る三つの時代の物語。
終わりから始まりへとさかさかまに辿る歴史の一幕(スカイ・スクレイパ)
雲の上の研究室にて生活を送っている博士と機械式メイド。
博士は優雅にコーヒーを楽しむ。
上位の存在が見ているとも知らずに(スカイトスフィア)。
怪奇幻想が好きな少女は、あるとき書店で不気味な表紙の本を買う。
そこに書かれていたのはありえたかもしれないもうひとつの福岡だった(天神都市)。
『天神都市』
著者:秋山真琴
発行:雲上回廊
頒布:第一回「文学フリマ福岡」あ-03 眠る犬小屋(委託)
日程:2015年10月25日(日)
価格:700円
判型:A6(文庫本)
頁数:156ページ
部数:100部
置き忘れた恋心を探しに戻ってきたように、秋にしては暑い日だった。
待ち合わせの時間には、まだ時間があったので、涼みがてらラインナップを勉強させてもらおうと馴染みの書店に入る。
大通りに面したこの書店は、市内でも優れた書店員が勤めていることが一目で分かる。本読みはどうしても自分たちのコミュニティに引きこもってしまいがちだけど、それだと書店には本読みしか訪れなくなってしまう。社会に生きているひとたちの速度に合わせ、棚を作ろうと努力する書店員がいる書店は良い書店だと思う。
とは言え、私の興味は、やはり文芸だ。
レジ前の平積みや新刊棚の前は、一瞥程度に留めておいて、さっさと通り過ぎる。社会が云々と能書きを垂らしてみたが、私自身は本読みの狭いコミュニティに引きこもっている方で、どちらかと言うとジャンル小説の棚作りの方が興味深い。ジャンル小説と言うのは、いわゆるエンターテイメント全般ではなく、ミステリやSF、ファンタジーのようにジャンル分けされているもののことを指す。
売れ筋の国内エンターテイメントの脇を通り、その先へと足を運ぶ。国内ミステリやSF、海外のそれでもなく、目当ては怪奇幻想。多くの書店においては、いわゆるホラーやゴシック、あるいはファンタジーに併呑されがちだけど、この書店では、しっかりと怪奇幻想がひとつのジャンルとして認められている。並びとしては、幻想寄りの海外SFの隣で、近くにはシュルレアリスムもある。
「分かってらっしゃる」
独語したその言葉は、あるいは居丈高な言葉だけれど、気持ちとしては師匠のありがたいお言葉に耳を傾ける弟子のそれだ。
(本文90ページより)
【目次】
「スターリストリィ」
「スカイ・スクレイパ」
「スカイトスフィア」
「天神都市」
【購入方法】
文学フリマ等の即売会で直接販売をおこなっております。
11月以降より委託や通販、電子書籍化を予定しております。